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小児科一般解説・その他

解熱剤の使い方

子供の40℃の発熱には解熱剤を使うべき??

解説「発熱することは危険?」で書きましたとおり、発熱は「ヒトがウイルスから身体を守るために、わざわざ体温を上げて防御している」という状態です。

体温の上昇は、体温調節中枢でセットポイントを上げる事によってなされます。体温のセットポイントとは、ちょうど、エアコンの設定温度のようなものです。「38℃」と設定すれば、体温が38℃以下の時は体温を上げようとし、38℃以上の時は下げようとします。

このセットポイントを外部から下げようとするのが解熱剤です。解熱剤は髄膜炎・脳炎・脳症を抑えることはできませんし(理論的には軽減させる可能性はありますが、発症を抑えるほどの効力はないと思われます)、熱性けいれんを抑えることもできません1)。また、純粋に体温が上がることだけによって脳に障害を与えるのは、低くみても42℃以上の時です。なので、「熱が高くなって怖いから解熱剤を使う」という必要はありません。

ただ、「解熱剤は使わないようにしましょう」と提案するほど悪いものでもありません。解熱剤の効力はたかだか4~5時間程度です。子供に用いるような解熱剤では「体温を下げてしまって、ウイルスの増殖を加速するから危険」というほどの効果はありませんので、使ってはいけないというものでもありません。

したがいまして、熱が高いからと言って、必ずしも解熱剤を使う必要はなく、たとえ40℃の発熱であっても、元気が良ければ使わなくてよいと思います。熱が高くて、グズって眠れないとか、だるくて飲食ができないというような時、数時間楽にして眠らせてあげるとか、飲み食いさせてあげるといった使い方をするとよいと思います。

以前、熱性けいれんの既往のあるお子さんに関しては「解熱剤を使うと、熱が上がったり下がったりして、熱が上がるときにけいれんを起こしやすいので、解熱剤は使わない方が良い」と言われておりましたが、近年の研究で、解熱剤を使っても使わなくても、熱性けいれんの頻度は変わらないということが分かっております(ガイドラインでも使って良いことになっています)。

ただ、「変わらない」と書いたとおり、解熱剤で熱を下げても、熱性けいれんの頻度は下がりません。つまり、「使ってもかまわないが、使ったからといってけいれんは防げない」ということです。元気が良ければあえて使う必要はありません。

解熱剤が元になって起こる病態(病的な状態)に、「ライ症候群」というものがあります。成人でも起こりますが、小児では起こりやすく、特にインフルエンザや水痘の時に起こりやすいと言われています。このライ症候群というのはとても怖い病態で、肝臓や脳が急激に障害されてゆき、短時間でICU管理が必要な状態になります。死亡することも多い病態です。

特にアスピリンという成分を含む解熱剤で誘発しやすいと言われますが、その他の解熱剤でも起こります。

そのため、小児ではアセトアミノフェンという成分の解熱剤が推奨されており、その他の成分は極力使用しないようにされています。アメリカなどでは、イブプロフェンという、比較的マイルドな解熱剤でさえも推奨されておりません。

なので、大人に処方された解熱剤を半量にして子供に飲ませるといった使い方はやめましょう。

子供と大人は違う生き物と考えて下さい。かかる病気も、薬への反応も全く異なります。だからこそ内科と小児科が分かれているのです。

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