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「流行らないなら、インフルエンザワクチンを打たなくていいはず!」これ本当?

2020年冬から2022年まで、インフルエンザが全く流行りませんでした。

新型コロナウイルス感染症の関係で、インフルエンザの検査をしない医療機関も多かったため、一概にコロナ前との比較はできませんが、藤沢市全体のサーベイランスを見ても、感染者はほとんど出ておりません。きっと、「あ~、流行らないならインフルエンザのワクチンなど接種しなければよかった。お金がもったいなかった~」と思った方も多かったのではないでしょうか。しかし、これは本当でしょうか?

最近、インフルエンザが全く流行らなかったということは、ワクチンを接種した人以外、インフルエンザの抗体を獲得した人はいなかったということです。

この状況が、来シーズン、その次のシーズンと、皆が今のような手洗い・マスクで感染防御し、インフルエンザがずっと流行らなかったら(それは本来良い事なのですが)…しかも、皆がワクチンを接種しなかったら…、私たちは徐々にインフルエンザに対する抗体を失い、季節性インフルエンザウイルス(いわゆる普通のインフルエンザウイルス)が、あたかも新型インフルエンザと同じような(皆が抗体を持っていないので、新型コロナウイルスのように急激に感染が広がる)振る舞いをすることになります。

今回の、新型コロナウイルスで医療や社会が一時的に崩壊したのは、致死率が高い(ウイルスの毒性が強い)からではありません。感染力が強いのと、皆が抗体を持っていないからです。それほど致死率の高くないウイルスでも、皆が抗体を持っておらず、一時期に多数の人が罹患すれば、医療や社会は崩壊します。インフルエンザウイルスには治療薬がありますが、多数の人が一度に罹患すれば足りなくなるでしょう。ICUベッドや人工呼吸器も同様です。

だから、こんな時こそワクチン接種が大事になると思います。

インフルエンザを流行させた方が良いと言っているのではありません。インフルエンザが流行しない時こそ、多くの人がワクチンを接種し、抗体を獲得しておくことが大事になるのです。

今回の新型コロナ感染症の騒動で、新しいインフルエンザワクチンの開発が遅れてしまっていないか心配ですが、もう少しで国産の新しいワクチン(不活化・鼻腔投与のワクチン)が開発されるはずです。これならば感染予防も期待できます。皆でワクチン接種をして、お子さんを守りましょう。