CORONAVIRUS

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コロナウイルス感染症ワクチン解説・その他

子供・小児への新型コロナワクチン接種はすべき?

どのようなワクチンも、全く危険のないワクチンというものはありません。そのため、ワクチンを接種したときのリスクと、接種しなかったときのリスクを比べ、どちらが大きいかを比べて最終的に判断します。そのため、最終判断する人によって「接種した方が良い」という人と「接種しない方が良い」という人に分かれると思いますが、それはある程度仕方のない事であることをご承知おき下さい。以下に記載するのも、必ずしもそれが正しいという事ではなく、色々な情報を得た上での、私個人の考えである事をご了承下さい。
結論からお伝えすると、私は小児でもコロナワクチンを接種した方が良いと考えています。これは成人や国家を守るための集団免疫効果だけを考えたものではなく、本人のためにもその方が良いかと考えます。

若い世代の特徴として、成人よりは重症化しにくい。ということがあります。そのため特に10代以下では、高齢者と比べてワクチンの必要性も少ないということになります。しかしながら、当院で診断した、10代以下のコロナウイルス感染症患者さんたちの中にも、重症化したり後遺症を残した方たちがおられます。特にデルタ株以前の株の感染症では、インフルエンザなど他の疾患に比べて明らかに多く、また重症度も高いものです。オミクロン株になってからは、重症者の割合は低くなったものの、若年者の感染は激増し、当然ある一定の割合で重傷者が発生します。

また、このウイルスは、歳をとってから初めてかかるようなことがあると怖いウイルスです。ワクチンを接種していない高齢者の重症化率を見て頂ければ分かると思います。10代の方達は成人に比べると重症化するリスクが少ないので、少し怖いものの、コロナにかかってしまうのでも構わないのですが、いずれにしても20代になる前に抗体を獲得したいところです。ただ、コロナにかかった場合、若い人たちでも味覚・嗅覚障害は割と高い頻度で起こることが分かっており、その味覚・嗅覚障害が治らない(と思われる)ことも起こっています。嗅覚障害の程度は思いのほか強く、「納豆を鼻に付くほどの距離で嗅いでみて、やっと分かる程度」と言われます。これほどの嗅覚障害や味覚障害が残ると、例えば食べ物が傷んでいても気付かずに食べてしまうとか、火事になっても、直接目で火を見るまで気付けないなど、日常生活にかなり支障をきたします。また、明らかにコロナウイルス感染症が原因と考えられる起立性低血圧(不登校の原因となりやすい)が発生したりしています(当院の症例。大学病院の後遺症外来に紹介となりました)。さらに10~20代の男性では心筋炎(突然死の原因となる)になる率が他の年代・性別よりも高く、その辺りのリスクを考えれば、ワクチン接種のリスクを上回ると思われます。
10代へのコロナワクチン接種は、同じ小児科医でも意見の分かれるところだと思われますが、私は以上の理由から、接種をお勧めします。私の10代の子供たち、甥・姪たちも既に5回の接種を行っています。

現在日本では、生後6か月以上5歳未満にもコロナワクチン接種が行われておりますが、この年代への接種に関しては、少し考えてしまうところがあります。現時点で当院では接種を行っておりません。

いろいろな専門家の話を聞いても、この年代のお子さんたちにワクチンを接種して抗体をつけることは、お子さんたちの利益になると思われますので、安全に接種できるなら接種すべきです。ただ、このワクチンは筋肉注射で、日本の他のワクチンのような皮下接種とは異なります。筋肉注射は針を深く刺入しますので、神経損傷などに気を付ける必要があります。例えば、上腕(三角筋)に接種することを考えると、腕を回内(内側へひねる感じ)すると、神経損傷がおきやすくなります。私は新生児医療が専門で、乳児に対してシナジスという筋肉注射をたくさん接種してきたため、大腿への接種(最も安全と言われている)にも慣れてはおりますが、1歳を過ぎたお子さんでは力も強く、暴れた場合の危険性、例えば針による裂傷(エピペンなどでは実際に事故がおきています)なども考えなければいけません。日本小児科学会や厚生労働省からも、安全な接種部位に関する記載は発表されておりますが、暴れる場合の押さえ方や、暴れた場合にどの程度の神経損傷・皮膚の裂傷等のリスクがあるかなどは示されておりません。したがいまして、現時点では、ワクチンを接種して抗体をつけるのは理想的なのだけれど、安全に接種するのが難しいというのが現実だと思われます。